収支計画の作り方

はじめに

前回はビジネスモデルとマーケティングについて書きました。 今回は、収支計画の作り方についてまとめていきます。

この記事は カラー版 マンガでわかる 事業計画書のつくり方 を参考にさせて頂いています。


収支計画

事業計画において重要なのは、長く継続して事業を続けられることです。 つまり事業を継続するには利益が得られるかが重要になります。 そこで事業計画書では事業収支を計算し収支計画を立てます。 収支計画では、以下の手順で作成していきます。

  1. 損益計算書を作成
    1. 売上見込を計算する
    2. 売上原価を計算する
    3. 販売費と一般管理費を計算する
    4. 法人税等の計算
  2. 資金計画をたてる
  3. 返済計画をたてる
  4. キャッシュフロー

収支計画では、損益計算書事業の利益を、キャッシュフロー事業の継続性を示します。

損益計算書

損益計算書(PL)は、企業のある一定期間における収益と費用の状態を表す財務諸表の1つです。 事業計画書の損益計算書は、その事業の将来性を具体的な数字で示すものです。 新規事業では、初年度から黒字は難しいので赤字から黒字化し安定して利益を挙げられるか示すことが重要となります。 主な構成は以下のとおりです。

次の表が損益計算書の例となります。

1年目 2年目 3年目
売上 2,000 2,400 2,800
売上原価 600 700 800
売上純利益(売上-売上原価) 1,400 1,700 2,000
販売費・一般管理費 1,600 1,700 1,800
営業利益(売上純利益-販売費・一般管理費) ▲200 0 200
営業外損益 ▲20 ▲10 ▲20
経常利益(営業利益+営業外損益) ▲180 ▲10 180
特別損益 ▲10 ▲20 ▲20
税引前当期純利益(経常利益+特別損益) ▲170 ▲30 160
法人税 0 0 41
当期純利益(経常利益-特別損益) ▲170 ▲30 119

売上見込の計算

まず、損益計算書書くために売上見込を立てていきます。 売上見込みの計算方法としては、次のようなケースが考えられます。

  • 小売業・対企業ビジネスの場合
    • 売上 = 商品単価 x 販売数
  • 飲食・サービス業の場合
    • 売上 = 平均客単価 x 平均客数 x 営業日数

他にも、公開されているデータを活用して売上見込を立てていく方法も考えられます。

売上原価の計算

売上原価の計算では、仕入れや製造にかかった費用を計算していきます。 売上原価は、販売量に比例して費用がかかるので変動費にあたります。 モノを作るところもしくは仕入れるところから売るまでのすべての費用がここにあたります。 原価の計算は基本的には以下のとおりとなります。

原材料費・仕入れ費 + 労務費 + 経費

  • 原材料費・仕入れ費
    • 商品の材料費や商品を仕入れるのにかかる費用
  • 労務
    • 製品をつくるのにかかる人件費
  • 経費
    • 製品を作るのにかかる諸費用

売上原価を計算する手順は次のようになります。

  1. 商品一個あたりの売上原価を出す
    • 商品一個あたりの売上原価 = 原材料費・仕入れ費 + 労務費 + 経費
  2. 商品の原価率を計算する
    • 原価率 = 売上原価 / 販売価格
  3. 売上見込に原価率を掛ける
    • 売上原価 = 売上見込 x 原価率

販売費と一般管理費の計算

基本的に売上原価以外の費用は以下の2つに分けられます。

  • 販売費
    • モノを売るのに直接的にかかる費用
  • 一般管理費
    • 会社の維持にかかる費用

販売費は、売上見込の商品数に影響を受けるため計算するときは注意しましょう。 一般管理費は、売上見込の商品数に影響を受けないため事業計画書では固定になります。

損益分岐点を把握しておく

売上見込・売上原価・販売費と一般管理費 がわかると損益分岐点が計算できます。 損益分岐点とは、名前の通り利益がマイナスからプラスに転じる点を言います。

売上 < 売上原価 - 販売費と一般管理費 のとき マイナス

売上 = 売上原価 - 販売費と一般管理費 のとき 損益分岐点 (プラマイゼロ)

売上 > 売上原価 - 販売費と一般管理費 のとき プラス

となります。 なので、計画をたてるときに利益がプラスになるように目標を設定することが大切です。

法人税等の計算

収支計画には、納税額も含めておく必要があります。 法人税等には主に以下の4種類が含まれます。

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 地方法人特別税

事業計画をたてるときは金額の大きい法人税等に絞って概算を算出します。 ここで使われるのが実効税率です。 実効税率は、上記の4つの税率がひとまとめにされた税率になります。 法人税等の計算は以下の通りになります。

法人税等 = 経常利益 x 実効税率

法人税の税率は国税庁によって定められているので、 最新の税率は国税庁のサイトを参照して確認してください。 現在(2019/10/20)の平31年の税率を例にすると資本金1億円以下の法人の場合には以下の通りになります。

  • 年800以下の部分には15%
  • 年800超の部分には23.20%

つまり 売上が1500万の場合

(800 x 0.15) + (700 x 0.232) = 282.4万

282.4万 が法人税等の金額になります。

資金返済計画をたてる

事業を立ち上げるために、どのように資金を集めて返済するかをまとめていきます。 おもに以下の手順となります。

  1. 創業コストを見積もる
  2. 資金計画をたてる
  3. 返済計画をたてる

創業コストを見積もる

創業コストは以下の2つに分けられます。

  • 設備コスト
    • 物件取得費, 工事費, 設備・備品費
  • それ以外のコスト

実際に業者などから見積もりをして、根拠のある数字にするといいでしょう。

資金計画をたてる

創業にかかるコストを計算したら、創業に必要な資金をどのように集めるか考えます。 資金計画は金融機関から融資を受ける場合には必須となる項目です。 ポイントとしては創業コスト + 3~6ヶ月の運転資金で検討します。 計画には、資金の用途(店舗工事費、人件費等)でまとめて、調達の方法をどうするか記載します。 資金調達する方法としては大きく分けて以下の3つになります。

  • 自己資金
  • 友人・知人からの借り入れ/出資
  • 金融機関からの借り入れ

借り入れる際には、自己資金の割合が高いほどその事業への本気度が伝わるので審査に影響します。 少なくとも30~50%は自己資金でかくほできるようになっているといいでしょう。

返済計画をたてる

金融機関から借り入れる場合には返済計画も必須となります。 返済計画では、負債を利子を含めてどのように返済するか示します。 返済は当期純利益から行うので、損益計算書から確実に返せる金額を設定します。 3~5年の期間で各年に具体的に返済する金額を設定していきます。 作成例としては以下のようになります。

1年目 2年目 3年目 4年目
返済残高 1000 800 600 300
返済額 200 200 300 300
元金残高 800 600 300 0

キャッシュフロー表を作る

キャッシュフローでは、現金収支の流れをまとめます。 キャッシュフロー表は以下の3つの要素で構成されます。

営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計をフリーキャッシュフローといい事業に自由に使える資金になります。 1年目にはここは売上が安定せずに赤字になることがほとんどなので、財務キャッシュフローで借入などで補填します。 残高がマイナスになると資金ショート(倒産)を意味するのでプラスになるように計画しましょう。 作成例としては以下のようになります。

1年目
前年残高 0
営業キャッシュフロー ▲100
投資キャッシュフロー ▲900
フリーキャッシュフロー ▲1000
財務キャッシュフロー 1200
残高 200

さらに実務でキャッシュフローをコントロールするために資金繰り表を作成します。 資金繰り表では1ヶ月単位で予測と実績で分けてキャッシュフローを作成します。 予測と実績を分けることで なぜズレたのか が分析することができ、その後の予測の精度を向上できます。

さいごに

今回は収支計画の作り方について書いてきました。 次回は行動計画について書こうと思います。